第十九夜「新人教育」 | ハッピー★レボリューション |
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ふつうの女のコが、ナンバーワンキャバ嬢になるまで。 |
text by 甲賀 香織 |
第十九夜「新人教育」(1/4) |
話って何だろう? 営業前に菊地から呼び出された美里は、店の近くの喫茶店に向かっていた。 「美里ちゃん、おはよう! 仕事前にごめんね」 「ぜんぜんいいですけど…。 それより話ってなんですか?」 「うん。 今日は美里ちゃんに『マネジメント』について話があるんだ」 マネジメント??? 「美里ちゃん、ウチの店では もうすっかり中堅だよね」 「え? あ…はい…」 「実は美里ちゃんに 『新人教育係』をやってほしいんだ」 「ええ? 私が、ですか? そんな、いきなり言われても…。 だって私、何もできませんよ?」 「そんなことないよ。 美里ちゃんは、みんなに慕われているし、 僕のアドバイスも素直に聞いて、 結果も出してくれている」 震災後の苦しい時期を、菊地とタッグを組んで売上を伸ばしたことを、美里は思い出していた。 「それに何より、誰よりも努力してる。 新人教育係は美里ちゃん以外、適任はいないよ」 「私……人に教わることはあっても、 誰かに何かを教えてるなんて… 高校の部活動以来なんですけど…」 「僕はね、従業員全員でお店全体を盛り上げていきたいんだ。 そのために、美里ちゃんの力を貸してほしい。 だいじょうぶ! 僕だってもちろん、全力でサポートするよ」 「確かに、新人のコたちも相談する相手がいないと 辞めていっちゃいますしね…。 ……わかりました。 うまくできるか自信がないけど、 私が今まで教わったことを、 自分なりに下のコたちに伝えてみます」 ∗ ∗ ∗ 「初めまして! 勇也でーす!」 真っ黒な紙に、左側には写真、金色の文字。 これは、結構お金がかかってるなぁ… 差し出された名刺を見ながら、美里は自分の名刺を思い浮かべた。 ある日の営業後。 『ゆかた祭』のイベントが終わり、珍しくアフターがなかった美里は、同じくアフターのない新人のコたち3人を誘い、タクシーに乗り、新宿歌舞伎町のホストクラブに向かった。 「せっかく着付けてもらったのに、 このまま家に帰って脱ぐのはもったいないよね」 「美里さんて よくホストクラブに行くんですかぁ?」 「ううん。ほとんど行かないかな」 「私、初めてなんですよぉ〜」 そんなことを話しているうちに、タクシーは歌舞伎町に到着した。 あの日の菊地店長の話を受けて自分なりに考えた美里は、お客様の気持ちを言葉で伝えるより、体験するほうが早いと考えて、このコたちをホストクラブに連れてきたのだった。 |
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