第十九夜「新人教育」 | ハッピー★レボリューション |
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ふつうの女のコが、ナンバーワンキャバ嬢になるまで。 |
text by 甲賀 香織 |
第十九夜「新人教育」(3/4) |
「美里ちゃん…何がおかしいの? 俺、そんなにおもしろい?」 「あ、ごめん。 ちょっと思い出し笑いしちゃって」 「じゃ、お姉さぁん。 俺、ハジけるの飲んでハジけたい!」 すかさず、シャンパンの欄を開いた状態のボトルメニューを差し出してきて、勇也は満足そうな顔をしていた。 「あははは。 勇也くん、何飲みたいの?」 勇也の顔があからさまにパッと輝く。 「え? マジッすか? やっぱ、ドンペリでしょ!」 5万5000円と書かれた部分を指で差していた。 「すっごーい! ドンペリなんて、美味しそう! ところで、勇也くん。 何で私がドンペリを入れるわけ? このお値段分のサービスがあるとか!?」 美里は、急に皮肉の笑いを浮かべた。 勇也はもちろん、そんな表情の意味には気付かない。 「サービス!? じゃあ、俺が一晩付き合ってあげる!」 美里は、飲んでいたビールを吹き出しそうになった。 「一晩付き合ってくれるんだ!?」 女のコたちも、勇也と美里のやり取りに注目して笑っていた。 たとえお金をもらっても、 君と一晩付き合うことはないよ! でもこの感じ…まさに、新人の頃の私と重なるわ…。 会話もたいして続かないのに、 唐突に「ワイン飲みたい♡」っておねだりして よく失敗してたな…。 ワインやシャンパンをバンバン空けてもらっているお姉さんたちを横目に見ながら、美里もあせって無謀なチャレンジをしたものだ。 でも、今ならわかる。 オミズにも、費用対効果というものがあることを。 男友達に 「お金払って、女と話してもらうなんて、俺は信じられない」 って言われたことがあったけど、 キャバクラやクラブは女のコたちが、 お金をもらって話してあげる場所じゃない……。 新人ちゃんたちに、少しでも伝わるだろうか……? どういうときにお客様が、 ワインやシャンパンを入れたくなるか……。 しばらくして店を出て、美里たちは近くのバーで飲み直すことにした。 「さっきのお店どうだった?」 「まぁ、楽しかったです」 「ほんと?」 「あ、いえ、うーん…。 ごちそうしていただいたのに、なんか申し訳ないですけど… 正直微妙でした」 「何が微妙だった?」 「なんかよくわからないけど、 話してても楽しくなかったってゆーか…」 「そうだよね。 でも、実は私についた男のコ、 新人の頃の私とそっくりだった!」 「えーー!? 美里さんと? ほんとですかぁ? どんなところが???」 「無鉄砲にシャンパンってねだってみちゃうところとか、かな。 まぁ、それは今度話すね! せっかく集まれたんだから、今日はみんなで飲もー!」 彼氏のこと、お客様のこと、お店のこと……女のコたちの話を聞きながら美里は、この先の新人教育プランについて、思いを巡らせていた——。 |
つづく |
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