第九夜「美味しい客」 | ハッピー★レボリューション

キャバクラ系高収入求人のオミズナビ>業界情報>ハッピー★レボリューション>第九夜「美味しい客」
ハッピー★レボリューション
ふつうの女のコが、ナンバーワンキャバ嬢になるまで。
text by 甲賀 香織

第九夜「美味しい客」(1/4)
確かに、佐藤さんはたくさんお金を使ってくれる。
お店には頻繁に来店するし、ワインやシャンパンも2回に1回はあけてくれる。

だから、女のコたちからは、「美味しい客」と言われている。
でも、美里にはちっとも「美味しい客」だなんて、思えない。


佐藤さんはつい最近まで、れなちゃんを指名していた。
れなちゃんの順位は6位だったが、そのほとんどが佐藤さんの売上だけだった。

ところが、佐藤さんは3ヵ月おきに、きまって指名を替える。
佐藤さんに指名されるいろいろな女のコが、佐藤さんとの深い関係を噂され、そして、指名替えで売上がほぼゼロになると、女のコはいつの間にか、お店からいなくなっているのだ。
美里はそんなパターンを、少なくとも3人は見た。

それに、れなちゃんとの関係がぎくしゃくするのも、嫌だった。
さまざまな思いが頭を巡り、そのとてつもなく大きな黒い何かに、美里はぞっとした。

それにしても…。
佐藤さんはなぜ、れなちゃんじゃなくて、
私を指名するようになったんだろ…?


美里は以前、佐藤さんに誘われ、アフターに付き合った時のことを思い出した。

「ねぇ、ねぇ、美里ちゃぁん。旅行行こうよぉ、旅行!」

「りょ、旅行ですか…?」

「え? 嫌なの?」

「嫌なわけじゃないんですけど……」

「じゃ、いつにする? いつにする? 6月の半ばは?」

「6月はちょっと…」

「じゃ、7月は?」

「7月は…」

「7月なら大丈夫でしょ? じゃ、7月で決定ね! 予約しておくから」

冗談…だよね?

美里は冗談だと思っていた。

次に佐藤さんが来店したのは、翌週の火曜日だった。


前へ 1 2 3 4 次へ


コンテンツTOP


▲ページトップへ
業界情報TOP