第九夜「美味しい客」 | ハッピー★レボリューション |
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ふつうの女のコが、ナンバーワンキャバ嬢になるまで。 |
text by 甲賀 香織 |
第九夜「美味しい客」(3/4) |
それから一週間の間に、佐藤さんは4回も来店した。 必ず同伴で入店し、美里の都合が悪い時には店前同伴ということもあった。 美里のグラフは、以前のように苦労をしなくても、気持ちがいいほどぐんぐんと上昇し、やがて、売上ランク2位という位置まできた。 やった! 私も、やっと才能の花が開いたのね! 美里は、その時はまだ気がついていなかった。 今まで頑張っていた他のお客様への連絡や、せっかく来店してくださった方への感謝と気遣いを、すっかり忘れていることを…。 いつの間にか、美里は自分が見えなくなっていた。 人は好調な時に、反省をしないものである。 上昇気流が永遠に続くような錯覚に陥る。 佐藤さんは私にゾッコンみたいだから、ほかのコとは違うみたい。 旅行だってきっと、てきとーに流せるかんじだよね…。 なんだ、思ったよりラクショーじゃん! 恋愛も、お客様も、「私だけは特別」なんてことは、ない。 そんな基本的なことが、わからなくなってしまうほど、ナンバー2の地位は美里を舞いあがらせた。 「美里ちゃん、売上、すごいね! あとちょっとで1位じゃん! さすがだね!」 店の女のコたちからの、賞賛の声…。 ただ一人、菊地店長だけは、美里のこの危険な兆候に、気が付いていた。 |
つづく |
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