第九夜「美味しい客」 | ハッピー★レボリューション

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ふつうの女のコが、ナンバーワンキャバ嬢になるまで。
text by 甲賀 香織

第九夜「美味しい客」(2/4)
「佐藤さん、この間のアフターのお寿司、美味しかったです♪
ついついお酒もすすんじゃったから、二日酔い酷かったですよ〜」

「そっかぁ。俺も次の日の朝はつらかったな。
あ、そうそう。箱根、予約しておいたからね」

急に小声で耳打ちしてきた言葉に、美里はドキンとした。

ま、ま、マジで……?
冗談…じゃ…なかったんだ!!


そんな心が表情に出てしまったのか、佐藤さんは眉間にしわをよせながら、声を低くして言った。

「え? 約束したのに、まさか、ドタキャンなんて失礼なこと、
しないよね?」

「ドタキャンなんて、しませんよぉ〜!
スケジュール、確認しておきますね」

美里はとっさに答えてしまった。

その日佐藤さんは上機嫌で、ドンぺリやらニューボトルやらを入れて帰っていった。

どうしよう…
どうしよう…


不安な思いばかりが頭を巡り、その後の会話の内容なんて、さっぱり覚えていなかった。


営業終了後。
美里は、忙しそうに片付けをしている菊地店長の後ろをちょこちょこと着いて回り、今日の佐藤さんの旅行話のいきさつを話した。

「ねぇ、ねぇ、店長!
佐藤さんに口説かれて、私とっても困っているのだけど、
どうしたらいい?」

菊地店長の手がピタリと止まった。

「口説かれてる? あはははは」

「はぁ? 何がおかしいのよ。
私、これでも真剣に悩んでいるんだから!
旅行の予約までされちゃったのよ!」

「あぁ、そうか。ごめんごめん。
佐藤さん、太っ腹だけど、いろいろ大変らしいよね。
でも、美里ちゃん、それ、口説かれてるって言わなくない?」

「え? どういう意味?」

「ま、考えてみなよ。じゃ、お先ぃ〜」

ちょ、ちょ、ちょっと店長!!
ひどくない…?
私がこんなに悩んでるのに……。



美里はそのとき、以前、あやのさんから教わったことを思い出していた。

そういえばあやのさんは、
「本当に好かれていれば、お客様は女のコが嫌がることはしない」って言ってたっけ…。
だとしたら、私は好かれていないってこと?
じゃあ、なんで私が指名されたの?

もう!
一体、何なのよ!



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