第十二夜「リーマンショックの衝撃」 | ハッピー★レボリューション

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ふつうの女のコが、ナンバーワンキャバ嬢になるまで。
text by 甲賀 香織

第十二夜「リーマンショックの衝撃」(3/4)
月初の全体ミーティングで、お店の売上が3分の2になっていることを、オーナーが興奮しながら何度も繰り返していた。

確かに、これまでの実績を見ても、そこまで急激に売上の変動があった月は珍しいし、大きく変動があったシルシは、女性たちの順位にも表れていた。

美里は、今回3位になっていた。

でも、順位が上がった嬉しさよりも、小林さんの言葉が象徴するように、美里を指名してくださっていたお客様のお顔を、今月は見られないのではないかという、悪い予感が頭をよぎる。

ミーティングが終わり、途中参加で入口付近に座っていた同期のサツキちゃんが駆け寄ってきた。

「ねぇ、ねぇ、美里、すごいじゃーん!
3位でしょ、3位!」

「うん……。でも、たぶん、今月ヤバイ」

「なんで?」

「小林さん、もう来てくれないって言ってたし、
他のお客様も、連絡が少なくなってる気がする」

「え? なんで? 小林さんと喧嘩でもしたの?」

「そういうわけじゃないんだけど、会社がヤバイんだって」

ミーティングでオーナーが言っていた通り、お客様との会話に、暗い話題が増え、話しづらい状況が多くなった。

普通は、明るい話題だけに徹するものだが、ネオンを覆う黒い影は、それさえさせてくれないほど、次第に、大きな存在になっていった。


お客様との食事の予定や、予約で埋まっていた美里の手帖は、気がつけば来週の1件の同伴とランチの約束以外、空白になっていった。

悪い予感は的中した––。

つづく

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