前夜「プロローグ」 | ハッピー★レボリューション

キャバクラ系高収入求人のオミズナビ>業界情報>ハッピー★レボリューション>前夜「プロローグ」
ハッピー★レボリューション
ふつうの女のコが、ナンバーワンキャバ嬢になるまで。
text by 甲賀 香織

前夜「プロローグ」(3/5)
「今度ね、私の男友達にボードに誘われたんだけど、美里も行こうよ!? ねっ!」

昼休みでごったがえすスタバで、カフェモカを片手に、あやはスケジュール帳を広げ、嬉しそうに聞いてきた。

「あ、うん。いつ? 考えてみる…」

どっちとも取れる曖昧な返事をしながら、頭の中は、口座の残高の計算でいっぱいだった。
結局、その夜メールで
「私、その日は約束があったみたい! すっかり忘れてた! ごめんね、また誘って!」
と断った。

はぁ…
なんでこんな、言いわけみたいな断り方しなくちゃいけないの…


ボードに行くにはお金がかかる。
スキーサークル出身の美里が以前着ていたウェアも、もはや流行は過ぎてしまった。
でも新しく買うお金はない。

お昼休みに、ボードに行ったみんなが、楽しそうに思い出話をしているのを聞いていたら、美里は急に惨めな気分になった。

なんで私だけ…



地方から出てきた美里には、都会のOLというのは憧れだった。
好きなだけおしゃれして、おいしいご飯を食べに行って、お料理教室とか、スポーツジムとか、たまにはコンパとか、クラブとか…。

そんな生活、学生時代は無理だけど、社会人になったらかなえられると思ってたのに…

でも、現実は、お金がなくて何もできない。

華やかな同僚たちに遅れを取らないようにと、ランチもお茶も、誘われたらできるだけ、付き合うようにしていた。
でもそれ以外、決して贅沢をしているつもりはなかった。



ひゃー、眠―い…
土曜日なのに、寝てられないのはつらいなぁ…


入社して4ヵ月目の夏に、土日だけ、スーパーの店頭でビールの試飲販売のバイトを始めた。

朝の10時から6時まで、トレイを持って立ってるだけで、9,000円か…
休憩が1時間あるから。時給1,285円…
居酒屋のバイトよりマシだけど…


トレイを持つ私の横を通り過ぎたパートのおばちゃんに、『マネキンさん』と呼ばれた。

この仕事、マネキンっていうんだ…
でもなんで、マネキンなんだろう…?


そんなことを考えながら、何度も腕時計を見てしまう。

うわぁ…
まだ1分しか経ってない…


そんなバイトをしていることなど、もちろん会社の友達には言えない。

前へ 1 2 3 4 5 次へ


コンテンツTOP


▲ページトップへ
業界情報TOP