ハッピーレボリューション

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第六夜 「男心って…」

「え? でも、脈のなさそうな人は消してちゃんと整理してるし、
 初めてのお客さんからそんなにメール来ないですし…」

「そう! そこそこ! 連絡は、待ってはいけないんだ。
 連絡は、絶対って言ってもいいくらい、
 自分からしなくちゃいけないんだ。
 その一番初めのメールが『お礼メール』ね」

美里は、「それくらいしてるし…」と、心の中でちょっと反発しながらも黙っていた。

「お礼メールは、その日お話しした方全員に、必ずメールするんだ。
 とすると、連絡先を知らない人にはできないでしょ?
 だから、お話した方全員に連絡先は自分から聞くべきなんだ。
『もしよろしければ、連絡先、教えていただけませんか?』ってね」

「えーー! 自分から!?

「そう、自分から。
 教えてくれない人は時々いるかもしれないけれど、
 聞くってことが大切なんだ。
 連絡先を知りたいと言われて、嫌な気分になる男はいないしね。
 極端な話、ちょっとくらい強引にだって、聞いたほうがいい。
 男にもプライドがあるから、
 誰にでも連絡先を教える軽い男って思われたくないし、
 照れもあるから、そこをちょっとリードしてあげたらいいよ」

「強引って、例えばぁ?」

「そうだね。
 ナンバーワンの愛さんなんかがよくやっているのを見かけるけど、
 お客様の携帯電話を『ちょっと貸して』って言って、
 自分で操作して、赤外線で飛ばしたり、
 お客様の携帯の新規メール作成で自分のアドレスを入れて、
 自分宛にメールしたり、
 すかさずメモとペンを差し出したり、とか、かな」

「へぇ…。愛さんって、そこまでしてたんですか。知らなかった」

「そうだよ。売れっ子であればあるほど、
 自分から積極的にお客様に連絡をしているものなんだ。
 でね、そうやってゲットしたアドレスにお礼メールする時の、
『絶対やってはいけないこと』があるんだけど、なんだと思う?」

「絵文字なしでメールを送っちゃだめ、とか?」

「違う違う。絵文字なんて、あってもなくても、
 男にとっては結構どうでもいいことだよ。
 大切なのは、営業をしないこと!」

「はぁ? じゃ、メールする意味ないじゃん!」

「そんなことないよ。
 その代わり、そのお客様と会話した内容について、
 改めてメールで感想を書いてみたり、お食事に誘ってみたり…」

「え? だって営業しちゃだめって言ってたのに、
 同伴に誘っちゃだめじゃん!」

「違うよ。食事はあくまでも食事! 同伴じゃないの」

「同伴じゃない食事なんて、自分の価値下げちゃうからだめじゃない?」

「ううん。逆だよ、逆。お礼メールの目的は
『あぁ、このコ、丁寧でいいコだな』という印象を残すこと。
 お客様って、特に初来店だったりしたら、
 いろんな女のコが席につくでしょ?
 みんなから名刺もらうでしょ?
 正直、誰が誰だか、わからなくなっていると思うよ。
 名刺だって、その日か、次の日にポイしちゃう人がほとんど!」

「ええええ!!
 せっかく高い名刺にしたのに、意味ないじゃん。
 でも、タイプのコがいたら、別でしょ?」

「確かに、そうだとは思う。
 でも、自分から連絡することは、よっぽどのことがないとないだろうな」

「なんでぇ?
 タイプだったら、絶対連絡するって!」

「男って、意外と臆病だから、
 初対面の女のコを自分から誘うってことは、できないんだ。
『返事がこなかったら、嫌だな』とか、
『どうせ客だし』とか思われているんだろううなって、変な想像したり。
 そんな男心なんだから、タイプのコでも、そうじゃなくても、例えばさ…
『昨日はありがとうございました。
 ○○さんとお話できて、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
 昨日○○さんのおっしゃっていた焼肉屋さん、
 今日外から覗いてみたら、
 確かに芸能人のサインとかいっぱい飾ってありました。
 私も、一度行ってみたい! 
 ○○さん、連れて行ってくださいませんか?
 ○○さんのご都合教えてください』
 てなメールが来たら、思わず返信したくなっちゃうもんだよ」

「そういうもんですかぁ。
 うーん…ちょっと面倒くさそうだけど、やってみます!」


「美里さん、送りの車、到着しましたー! すぐ出られますかー?」

入口で美里を呼ぶ声がした。

「じゃ、店長、また明日! お疲れ様でした!」


車の中で美里は、菊地店長の話していた愛さんの営業方法を思い出し、ミステリアスな愛さんの裏が垣間見られたようで、ドキドキした。

私も頑張れば、愛さんみたいになれるのかもしれない…

初めて、野心が頭をよぎった。

(つづく)


★ Kaori's column ★

vol.07 お礼メール
あなたは、お礼メールにどんな内容を書いていますか?

「今日はお話できて楽しかったです! また来てね♡」

ちょっと待ったぁーーー!!
これ、絶対やっちゃだめですよ。絶対。

お礼メールに書くべきことは4つ。
(1) その方のお名前を3~4ヵ所入れる。
(2) お礼文
(3) お客様との会話の内容に対する尊敬や感嘆。
(4) 食事のお誘い(注意:同伴のお誘いはNG!)

お礼メールでは絶対に営業してはいけません。
聞いた連絡先全てに、ひたすらこれをやり続ける。
これだけで、ある一定確率で新しいお客様が増えていきます。

仕組みはこうです。

このコ、いいコだな
 ↓
食事に誘ってくれているし、営業かもしれないけど食事だけでも行ってみるか(同伴じゃないし)。
 ↓
うん。やっぱりいいコだ。一緒にいて楽しい。
 ↓
同伴のつもりじゃなかったけど、もっと話したいから、同伴してあげよう。
(もしくは)
 ↓
今日は食事だけだったから、今度キャバクラ行く時にはこのコのところにしよう。

となるわけです。

確かに、中にはいますよ。
「こいつ付き合いいいから、店外デートだけ誘って、お店には行かない!」っていう、かっこ悪いお客様。
でも大丈夫! お食事のお付き合いは一度だけっていう、ルールを決めるのです。

その後お店に来なかったら、次にご来店して指名をしてくださるまで、店外デートなんてしなくて良いのです。都合が合わない、という理由でお断りすればよいのです。
それ以上、そのお客様に店外デートなどで時間を割いてはいけません(メールの返信は愛想よく、そして必ず返信は必要ですが)。

でも仮に、その方がご来店されて、店外デートに誘われたら、またお食事などお付き合いしてみてください。
トップのコたちは、何十人、いや何百人のお客様と、裏でこのような地道な努力を重ねているものなのです。