第十六夜「お金の幻想」 | ハッピー★レボリューション |
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ふつうの女のコが、ナンバーワンキャバ嬢になるまで。 |
text by 甲賀 香織 |
第十六夜「お金の幻想」(2/4) |
かわいい服を買ったときには、テンションが上がる。 美里もOL専業の頃は、給料の2割近くを洋服代につかっていた。 家のクローゼットは、無理矢理押しこんだ洋服でドアが完全に閉まらない。 ドレスは仕事上、必要だとは思うけど。 でもだからといって、 それでお客様が増えるわけじゃないし…。 新人の頃に、名刺にお金をかけてみたけれど、結局は自己満足で終わり、お客様にとってはあまり意味がなかったことと同じなのだろう。 とはいえ、サツキの気持ちは美里にもよくわかる。 オミズは、OLの頃のひと月分の給料が、数日間で稼げる。 お客様からタクシー代として、ポンと一万円札が渡される。 同伴で連れて行ってもらうお店は、どこも高そうな一流店ばかりで、店員さんからも丁寧な扱いを受ける。 まるで、自分の地位や、能力や、価値が上がったかのような、そして、お金が永遠に続くものだと思ってしまうような、そんな錯覚——。 女のコたちは、誰もが勘違いをしてしまう。 欲しいものを買いすぎて、お金が足りなくなったら「来月頑張ればいいや」なんて、平気で思うようになる。 実際、美里もそう思っていた。 「自己投資」 「お客様のため」 「仕事のため」 これで売上げが増えれば元がとれる…なんて、もっともらしい言いわけの言葉が飛び交うこの世界では、流れに身を任せてしまうのが一番簡単なのだ。 「いつか貯金すればいい」 「そのうち、ポンとお小遣いをくれる、素敵な男性が現れるはず」 「まだ20代だから、何とかなるし」 いろいろな幻想が渦を巻く。 目の前の欲に、夢が負けていく現実。 |
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