第十三夜「特別な店、特別な一人」 | ハッピー★レボリューション

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ふつうの女のコが、ナンバーワンキャバ嬢になるまで。
text by 甲賀 香織

第十三夜「特別な店、特別な一人」(2/4)
「お客様は今まで、何軒もはしごしていたところを、
一軒に絞っているだけだと思うよ。
だからその“特別な一軒”、いや、
“特別な一人”になれるかどうかってことだと、
オーナーが言ってたよ」

確かに、それはいえてる…

こんな結果になってしまったのは、お客様のリアクションが悪くなったせいだと、お客様のお財布が堅くなったからだと、美里は思っていた。
実際、そうだったのかもしれない。
以前より、お客様の反応が悪くなったことは事実だ。

とはいえ、繁盛しているお店があることも、お客様から聞いて知っていた。
何より、いくら不景気のせいとごまかしたところで、成績が上がるわけでも、お給料が増えるわけでもない。
このままでは現実問題、生活さえ危うくなってしまう。

美里は一ヵ月の自分を振り返ってみた。

今までまわりの空気でごまかしてきたけれど、今までと比べると、メールや電話、お食事などのお付き合いという営業量も、明らかに少なくなっていた。

特別な一店舗…
特別な一人って…何だろう?



次の日、美里は早めにヘアセットを終えると、近くのスタバでカフェモカを飲みながら、真っ白な手帖と向き合っていた。

この真っ白な手帖を、お客様との予定で埋めるには、
わたしは一体、どうしたらいいんだろう?


特別になるには、最低限の営業、つまりアプローチの量は保たなければいけない。
これまでも、全く反応のないお客様でさえ、2週間に1度はメールをしていた。
返信はあるけれど、来店につながっていらっしゃらない方には週に1度のメール、定期的に来店してくださる方には、2日に1度メールをしていた。

う〜ん…
これ以上メールの頻度を高めると、
しつこくなって逆効果だよね…
どうしたらいいのかな…


そのとき、先日、2週間ぶりに来てくださった吉田さんとの会話を思い出した。

「ねぇねぇ、美里ちゃん、聞いて!
○○(銀座では有名なクラブ)のコの話なんだけど。
数えるくらいしかあの店には行ったことがないんだけど、
この前僕、長期の海外出張に行ってたじゃん?
その帰りの空港に、そのコが来ちゃったんだよ!
『お迎えに行きたい』っていうメールがあったから、
またどうせ営業メールで、本当に来るわけないだろうと思って、
からかい半分でフライトの予定を返信したんだ。
そしたら、ほんとに来たんだよ、そのコ!
いやぁ、営業マンとして、ちょっと尊敬したなぁ。
だって成田だよ? 成田!」

えー
普通、そこまでする…?



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